先日
本当に久しぶりに
映画を観に行きました。
普段、友人から映画を誘われても、断ることが多い私です。
長い時間映画を観て疲れて寝てしまうからです。
そんな私が、わざわざ大森の映画館まで足を運んだのは、「映画のどこかに、中川智正さんの研究成果が盛り込まれている可能性」を自分の目で確かめたかったからです。
結果としては、映画、パンフレットともに、中川智正さんの研究成果については一つも触れていませんでした。
それでも私は、映画を観て良かったと思います。
中川智正さんが死刑執行直前にトゥ先生宛に書いた手紙や、確定死刑囚になっても化学研究をしていた理由の一端が理解できた気がしたのです。
私自身が中川智正さんに注目するようになったのは、獄中から死刑囚にも関わらずVXに関する化学論文を英語で発表できる能力がすごいと思ったのがきっかけでした。
医者として挫折し、犯罪者として確定死刑囚となりながら、化学者として世のために毒物に関する論文を出して最期を飾れたなんてよい人生ではないかと思っていたのでした。
今回、映画をみて、改めてオウム真理教のVX事件を調べ直してみると、
中川さんとしては、研究成果を誇りたかったという気持ちなどなく、教団や自分がおこした罪を償う一環として、論文を出したのではないかと思うようになりました。
自分たちが犯したことを真似たテロが世界から根絶されることを心から祈る気持ちで書いたのではないかと。
いささか中川さんを褒めすぎでしょうか。
これから数回のエントリーを通して、中川智正さんがなぜ確定死刑囚になってからも化学研究を続けていたのか、について、映画の内容、オウム真理教の起こしたVX殺人事件に触れながら考えてみたいと思います。
私は、最初この映画では、他の女優さんが大爆笑(LOL)のTシャツ着て出てくるのかな?とか思っていたのですが、実行犯女性2人が出てきたのに驚きました。
アメリカの映画監督やプロデューサーが、実行犯(インドネシア人、ベトナム人の二人の女性)のインタビューに成功し、彼女ら二人は絞首刑になるところだったが、国際的取引によって釈放され、その後も彼女ら二人の国境を超えた友情が続いていることや、一方で、彼女らに対してSNSで批判的な書き込みをしている者もいることが伝えられており、非常に現代的な暗殺者映画だったと感じました。
今回の金正男暗殺事件の実行犯は、金正男を知らない他国籍の若い女性2人でしたが、
スパイ行為や暗殺者と判定されたなら、処刑されるのが当たり前ではないか、と思っていました。現在でもYoutubeで過去にスパイ行為や暗殺者とされた者の処刑シーンを見ることができるぐらい、映画の世界とは別に、国際社会的には冷酷な現実があるのではないかと思いました。
スパイ行為ではないけど、中国では薬物持ち込みで逮捕されたらば、他国人であっても処刑しています。日本人でも麻薬持ち込みの片棒を担がされた者は中国によって処刑されています。日本弁護士連合会がどんなに問題を指摘しても、それが変えられることは
ありませんでしたし、これからもないでしょう。
アヘン戦争で敗戦した痛い歴史を中国は持っているから。
さて、映画の内容に戻ります。
映画を観ている時に、私はパンフレットにあるアメリカ人監督とプロデューサーの意図とは別に、「中川智正さんの研究成果がどこに現れるか」という目で見ていました。
私は一応、中川智正さんの論文は読んではいます。
中川智正さんの研究成果である、VXの前駆体を別々の場所で作り、それを金正男の顔でVXが合成されてしまったのではないかというものをマレーシア政府は知っている前提で話が進んでいるように思えました。
もっとも私の化学知識はほぼ無いに等しいですが・・・。
(私立の自称進学校育ちで、高2以降理科を受けなくて良かった。今ではあり得ないことですが、私の時はなぜか理科を一切やらなくても卒業させてもらったのでした。理科が大嫌いで理科を避けてきました。論文読もうにも読めないので、やはり基礎知識は欲しいところでした。若い人には基礎学力をつける機会を大切にしてほしいです。私のようにならないよう・・・)
だからパンフレットに監督たちが書いていたように「口紅に毒が入っていたとか、ダーツの矢や銃を使ったとかいう憶測があった」らしいけど、そのような話があったことさえも知りませんでした。
ともあれ、マレーシアとしては、東南アジアのハブ空港でもあるクアラルンプール空港で白昼堂々暗殺事件が発生したことが国辱もので、何としても実行犯を処分しなければというのが第一にあったと思いました。
実行犯の女性2人はなぜ金正男氏殺害に関与してしまったのでしょうか。
ベトナム出身の女性は女優を目指していて、インドネシア出身の女性は母国で貧困層であるためマレーシアに出稼ぎに来て、性風俗をしていたということです。
「日本のテレビ番組用のイタズラ動画を撮影するために出演してほしい」とスカウトする男が彼女らの前に現れます。彼女らは別々にスカウトされ、動画に出るための訓練を受け、暗殺の実行犯となってしまうのでした。
そのイタズラ動画に出るための訓練を経て、彼女ら二人は金正男氏暗殺の実行犯となります。金正男が暗殺されたあと、彼女らをスカウトした北朝鮮の工作員はジャカルタ・ドバイを経由して平壌に帰国してしまいます。
その後は、逮捕された実行犯女性2人の拘置所生活と裁判シーンのほか、北朝鮮をめぐる国際情勢の説明が、アメリカの視点から分かりやすく説明されます。
逮捕されるまでは接点のなかった実行犯女性2人の友情が描かれ、先に釈放されたインドネシア女性がいなくなってからのベトナム女性の精神的苦痛を想像すると、苦しくなりました。
どんなにかマレーシアとしては彼女らを処刑にして見せしめにしたかったかと思います。そこに国際関係上の私たちには見えないところでの取引がされて、たまたま二人とも結果として釈放されたからこそ、映画に出来たのではないか(いや、どちらか死刑になったにしてもアメリカならば映画においてはヒューマニズムに訴える話にして上映するかもしれない)。
そんなことで、実行犯女性2人でさえ自分たちが何をどうやって使って、金正男氏を殺したのかという具体的な部分があいまいなまま終わりました。北朝鮮への捜査など簡単にできるものではないのだから・・・。
だからこそなんですが、今一度、オウム真理教のVX事件を振り返ろうと、帰り道に
大森駅内ビルにいたペコちゃんをみて思いました。
なお、この映画を観て、北朝鮮問題などを深く理解したい方のために。
こちらの書籍が役に立つと思いました。
この書籍は中川智正さんが獄中で論文を書く際に参考にしてもいます。
中川さんの成果も盛り込まれています。
あと、DVD化もされるようです。
多分、毎日新聞の上記書籍のページを繰りながら映画を観ると、深く理解できた気分に
なると思います。